
編集元: 今まで生きてきて凄く衝撃的だった体験 その22
親父や祖父曰く、だいぶ破天荒だったらしい若かりし日の大伯父、たまに親戚の集まりで会うとそんな昔のいろんなことを話してくれた。
その中でもとびきりの衝撃体験。
戦後間もなく、大伯父は中学を卒業するや、ある商人に弟子入りをすることになり身ひとつで家を飛び出した。
毎日忙しく働き、勉強し、一刻でも勿体ないと出掛ける度に行き先まで全力疾走。帰りも全力疾走。
ある日、師の言い付けでお使い。その帰りも全力疾走。
ところが、既に陽も落ちて辺りは真っ暗。
それもあって、大伯父は馴れない道を踏み外してしまい、結構な高さを落下してしまったらしい。
気がついたら病院。
気がついたら、と言うのは実は正しくなくて、意識はあるはずなんだけど、目が開かない。指の1本も動かせない。
いわゆる金縛りのような状態で目が覚めていた。
耳は聞こえていて、忙しく働く看護婦さんや、医者、周りの患者の話し声でここが病院であることを自覚した。
そのうち、話を聞き付けたらしい大伯父の母親が病院に駆け付けた。声でわかったと言う。
大伯父は安心したのかそのまま眠った。
次に気がついたのは夜中だった。
目も開くし、身体も動く。
頭が包帯だらけだったと言う。
同室に患者がいる他は、人の気配がなかったので、大伯父は医者や看護婦さんを探しに部屋を出た。
ところが、数十歩を歩くうちに凄まじい疲労感を覚え、大伯父は無理をすまいと病室に戻り、そのまま眠った。
次に目覚めたのは朝か昼か……またしても金縛り状態だったと言う。
意識の上では口を開いて「わしは目覚めておる」と訴えるのだけど誰にも伝わってない。
人の気配を感じる度にそれを繰り返し、いつしかまた眠る。
その夜中にまた目が覚める。
今度は身体が動く。
出歩いて人を探そうとする、諦める。
そしてまた目覚めれば金縛り。
これを数日繰り返したと言う。